BONNjour ドイツ・ボンの国際公務員
国際公務員歴9年。インド、ジュネーブ、NY勤務を経て現在ドイツ・ボンの国際機関に勤務。国連での仕事のことやドイツでの生活のことなど書き残しています。
MBWA
MBA(経営学修士)のスペルミスではないですよ。MBWAです。

MBWAとは、Management By Wandering AroundまたはManagement By Walking Aroundというマネジメント手法のことで、「歩き回りマネジメント」とでも言うのでしょうか。プロジェクトマネージャーも仕事の9割の時間はコミュニケーションに使うと言われていますが、これはマネジメント全般に当てはまります。

MBWAは、「手法」というほど大げさなものではありませんが、部下のところへ行って、インフォーマルな会話をできるだけ頻繁にすることによって、仕事の状況を把握したり、こちらが期待していることをうまく伝えられたり、問題点を早期に発見できたり、そして何より重要なのは、信頼関係がより深まるというもの。トヨタの「現地現物」とも通じる部分があるかも。MBWAはインフォーマルに行うというのが大事で、マイクロマネジメントにならないように注意する必要があります。そして部下全員に対して片寄りなく行うのがコツだとか。当たり前のことのように思えますが、できていないマネージャーはたくさんいるし、あえて意識して実施するとチーム運営がよりうまくいくと最近実感しています。

そう言えば、新卒で入った会社の新入社員だったころ、社員研修で「ほう・れん・そう」という言葉を習いました。ちょっと古い言葉でしょうか?報告、連絡、相談をきちんとすることは、仕事を円滑に進める大切なコミュニケーションツールであるという意味でしたね。しかし、マネージャーはこの報・連・相を受け身で待っていてはいけないというのがMBWA。国際機関は、日本の大部屋の職場と違って、個室や少人数の相部屋になっていて仕事環境が仕切られているので、歩き周ることはとても大事。ボンに戻ったら、今までよりもっと足を使って仕事をしようと思います。

熱い心と、冷たい頭をもて
NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」の5/27放送分を、今日こちらの日本語放送で見ました。今回紹介されたのは、国連高等弁務官事務所(UNHCR)のウガンダ・リラ事務所長の高嶋由美子さん。僕と同じ国連職員です。そして年齢、勤務年数まで同じ。だけどその仕事の環境のあまりの違いに、映像を見て衝撃を受けました。やはり「現場」はすごい。

番組の密着取材の内容は、まさに数ヶ月前にケニアで起こった暴動によって、国境を越えてウガンダへ逃れてきた難民キャンプへの支援活動の内容。UNHCR職員としての自分の行動や決断の一つ一つが、難民の方たちの今後の人生を大きく左右する仕事。「やりがいのある仕事ですね」と言うことは簡単ですが、本部勤務を続けている僕には想像できないプレッシャーやストレスがついてまわる仕事なのだと思います。

「熱い心と、冷たい頭をもて」
Cool head, warm heart by Alfred Marshal (YHさん、教えていただきありがとうございました。)
難民のことを思う「熱い心」とともに、一歩引いて全体を見ながらあらゆる手段を考える「冷静な頭」も必要。緒方貞子さんが昔おっしゃっていたそうで、高嶋さんが忘れずに大切にしている言葉。僕も心に刻みつけました。


Student Syndrome
学生症候群」とか「学生シンドローム」という面白い言葉があります。納期直前まで作業を開始しない行動心理のことで、Eliyahu M. Goldratt氏のCritical Chain(邦題:クリティカルチェーン)というビスネス小説の中でstudent syndromeとして登場し、いろんなところで引用されるようになりました。

2週間後に迫った試験の準備を、試験直前まで先延ばしにし、前日は徹夜なんていうことは誰でも経験することだと思います。こんなことは学生に限ったことではなく、ビジネスの世界、特にプロジェクトマネジメントには登場します。例えば、半日もあればできるような作業を、10日の納期でプロジェクトのメンバーに割り振ると、しっかり10日間かかって仕上がってくるというようなものです。納期直前(Last Minute)まで作業を開始しないからですね。「毎日がLast Minuteの連続ならばどんなに生産性の高い生活ができるだろう」とは、誰かが言った言葉です。

僕が担当するプロジェクトでも、学生症候群は多発します。そういう「症状」のあるメンバーには、作業工程をさらに分解し、短納期にしてやると割と簡単に改善することが多いのです。実はこれはスケジュール管理の問題だけではなく、先延ばし(Procrastination)という行為そのものがストレスを抱える原因になったりすることもあるそうなので要注意です。健全なプロジェクトを運営するために、メンバーの性格を知り尽くしていることも、プロジェクトマネージャーの大事な役割ということですね。

ワークライフバランス
ワークライフバランス、何年か前から日本でもしきりにこの言葉が使われているようですね。もちろんドイツでも話題に上がります。日本と比べたら十分バランスがとれているように見えるので、「冗談はやめてくれ」と最初は何度も思いましたが、ドイツはドイツのレベルで、ワークライフバランスの改善を真剣に論議しているのです。フランスやイタリアでもきっと同じことなのでしょう。

先日テレビを見ていたら、日本の企業の人事担当者がワークライフバランスの改善への取組みについて解説していました。でもその内容と言えば、単に会社に拘束される時間を短くするか、休暇などをもっとフレキシブルに取りやすいようにするとか、そんな話ばかり。基本的には、会社の中と会社の外で過ごす時間の割合ばかりに関心があるような感じでした。

本来ワークライフバランスとは、ワークとライフの両方が充実し満足いくようにするための考え方のはず。仕事の時間的な負担が減って、家族と過ごす時間が増えれば、即みんな幸せというような単純なものではないはずなのですが。。。。

例えば国連の職場を例に上げると、
・仕事外の時間を使って学位を取得するための学費の何割かを機関が援助してくれる制度があります。やりたかった勉強ができ、しかも職場にも応援してもらい、それによって将来また上級ポストへ昇進するための土台になります。
・他には、特に途上国の勤務で、国際機関への配偶者の雇用を支援するDual Careerというネットワーク。国をまたがった異動は無理をすると配偶者のキャリアを犠牲にして、人生設計を狂わすことになります。配偶者の「ワーク」へのサポートは、家族の「ライフ」へのサポートであり、異動する本人の「ワーク」へのサポートにまた戻ってきます。
・国連の大きなオフィスでは、語学研修を受けることができます。勤務地によっては家族も受講できたりします。異なる言語圏への異動の多い国連職員にとって、配偶者の現地語の習得は、生活の質や安全にかかわることなのでとても大切です。このあたりはまだまだ改善の余地がありそうですが。

僕の見たところ、「ワークライフバランス!」という言葉を叫んでいる人に限って、すでに勤務時間が短く、さらに時短したいだけの人が多い。「ライフ」を充実させてそれをどう「ワーク」の質の向上に結び付けるか、それによって家族と一緒に納得いく人生設計ができるか、というもっと本質的なバランスを考えている人は、この流行語をそんなに軽々しく口にしないような気がしますが、気のせいでしょうか?

命の重み
以前の職場で親しかった同僚(女性)が亡くなりました。しかも、その状況から考えて、自分から命を絶ったらしい。友達も多く、とても明るい女性だったのに。一体なにが彼女をそこまで追い込んでしまったのだろう?

残された家族の気持ち、親しかった友人や同僚たちの気持ち、彼女の上司の気持ち、そして何より命を絶たなければならなかった彼女の気持ちに思いを巡らせ、今日は仕事どころではありませんでした。

ふと、身の回りのことに置き換え身震いがしました。僕自身が命をどうするということではありません。部下たちがもし僕が気がつかないプレッシャーやストレスを抱えて、いつかそんな行動を起こしてしまったら、、、そのとき残された家族は?友人は?そんな状況に僕自身が向き合えるのか?黙って考えていると、いらぬ想像をしてしまうので、外の空気を吸いに建物を出ました。

もし仕事のことで悩んでいたのならば、死を選ぶ前に仕事などすっぱり辞めてしまえばいいのに、とはそういう状況に追い込まれていない冷静な人間が言うこと。「命より重いものはない」とは当り前のことだと思っていたのに、彼女にとってはそうは思えなくなってしまった一瞬があったのでしょうか?彼女を知っている一人として、それを止めてあげられなかったことが悔しくてなりません。

PMPへの道
フランクフルトにあるプロメトリックの試験センターで、PMP試験を受けてきました。試験時間は4時間!終わった時はぐったりしましたが、その場で合格通知をもらって機嫌よくボンに帰りました。

PMP(Project Management Professional)は、米国のNPO法人Project Management Institute (PMI)が主催する認定試験で、プロジェクトマネジメントに関しては世界で最も広く知られた資格です。応募資格は大卒後、4500時間以上のプロジェクトマネジメントに関する経験ということになっていて、受験申込のときに、プロジェクトマネジメント履歴を、プロジェクト一件一件詳しく申告しました。今まで書いたどんな履歴書より詳しい職務経歴を提出するはめになりました。

PMPはPMIが普及させているPMBOK(Project Management Body of Knowledge - プロジェクトマネジメントの知識体系)の内容をベースとしていて、すべての業種に適用できる汎用的な資格です。僕の専門であるITプロジェクトはもちろん、企業のブランド戦略、建設プラント、商品開発などにも適用できるし、「オフィスの引っ越し」、「コンサートの企画運営」、「顧客意識調査」なんてものでもいいのです。

PMPはプロジェクトマネジメントのスキルや知識だけでなく、「PMI Code of Ethics and Professional Responsibility」という、倫理やコンプライアンス教育に近いような部分を実際の試験範囲に含めてしまっているところが、とても気に入っています。利益のためなら相手を陥れたり、自分に不利な情報を隠蔽したり、部下に無理な残業を強要したり、違法行為をしてもよいというプロジェクトマネージャーは、PMPにはふさわしくないということです。その他には、品質、リスク管理、調達などあらゆる監査に耐えうるやりかたをプロセスとしてプロジェクトの計画に埋め込むやりかたは本当に勉強になりました。

準備期間は4か月。と言ってもフルタイムで仕事をしている身ですから、勉強時間は昼休み、帰宅後、週末などで、それでもたぶんトータルで150時間以上は費やした計算になります。教材はPMBOK Guide、試験対策本、PodCast。我ながらなかなかの集中力でした。うまくいった理由は、仕事と直結しているので、勉強した端から知識が役に立つことと、早い時期に「PMPを受験する」と周りに公言してしまったこと。後に引けなくなれば、やるしかないですからね。。。

ハロー効果
ある組織のメンバーが、専門家・技術者として一流の実績を残したといってその報酬としてマネージャーに昇進させ、専門家・技術者のグループをリードする立場に仕立てるというのは簡単なことではありません。それは本人次第ですが、うまくいかないことも多いのです。

僕の部下の一人は、エンジニアとして一級の実力を持っていて、しかも昇進の野心も十分に持っています。でもマネージャーになるためにはまだまだソフトスキルが足りないように僕には見えるのですが、本人はそれに気がついていないようなのです。上司の僕としては、前途有望な彼のキャリア開発を全面的にサポートしてあげたいので、あえて昇進のタイミングはあせらないようにしてあげようと思っています。

ハロー効果(halo effect)という心理学の用語があります。wikipediaによると、「ある対象を評価をする時に、顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる現象の事」と説明されていますが、組織の人事における上のような例にも「ハロー効果」という言い方をすることがあります。ある一人の職員の人事でハロー効果の失敗をすると、第一線の専門家を失い無能なマネージャーを作り上げることになり、短期的には2つのポストを無駄にすることにもなりかねません。

ところで、ハロー効果の「ハロー(halo)」とは、「後光が差す」の後光とか、聖像の光輪の意味だそうです。アップルのiPodやiPhoneのハロー効果のおかげで、マックの売り上げが上がったとか上がらないとか、最近のニュースではそんなポジティブな使われ方をしているようですね。

アルジェ
今日は本当は他のことをブログに書こうと思ったのだけど、アルジェリアの首都アルジェで起きた爆破テロのことがショックでそんな気になれませんでした。国連機関も標的にされて、現地の同僚たちの中にも命を落とした人が何人もいます。

昼間、UNDPのデルビシュ総裁から職員全員にメールが何通か届き、その中のひとつは総裁が今から国連の諸機関を代表してアルジェに向かうというものでした。もう今頃現地にいるのでしょうか。被害者の家族や、同僚たちのトラウマをケアするためのカウンセラーも同行するとのこと。非難声明を出してすぐのことだったので、行動の早さに驚きました。

こんな事件の後でも、現地の開発や人道援助の仕事を止めることはできません。ショックから立ち直って組織としての体制を立て直すというのは、並大抵の仕事ではないと思います。状況を見守りましょう。

イギリス連邦事務局
Commonwealth Logo

先日読んでいたエコノミスト誌(The Economist)の広告ページに、国連やNATOの幹部ポストの空席情報と並んで、英連邦事務局Commonwealth Secretariat)の空席情報が出ているのを見つけました。

英連邦とは、イギリスとその旧植民地の国の緩やかな国家連合のこと。日本語ではイギリス連邦または英連邦と言います。英語ではThe British Commonwealthという昔の名前では呼ばず、今は単にThe Commonwealthと呼びます。

英連邦にも「事務局」があったとは。所在地はロンドンになっています。なるほど。この時代に英連邦の事務局とはいったい何をしているのでしょうね。Commonwealth Tourが教えてくれます。

さて、広告によると、通常の空席以外に、Commonwealth Youth Programmeという、国連機関のJPOやYPPに似たような制度の案内も載っています。なかなか面白そうですが、対象はもちろん英連邦加盟国(53カ国)の国籍保持者のみ。これをお読みの方にはあまり関係ないですかね。


国連本部がモントリオールへ移転?
いえ、今のところそんな計画は国連側にはありません。だって今現在、老朽化した国連本部ビルの大改築計画(キャピタルマスタープラン)が進行中な訳ですから。

これはカナダのLa Presseからのニュース。ケベック州、モントリオール市などが移転案を検討しているらしいです。高コストのNYでビルを改築して本部機能を維持し続けるより、いっそのことモントリオールに丸ごと移転してしまうほうが安く済む、というのがカナダ側の試算らしいです。まあ、詳しい試算を見なくても実際そうなんだろうなぁと思います。僕がNYからボンに転勤するときも、いっそのこと国連本部をボンに移転したら長期的な事務局予算はかなりスリム化できるのにと、個人的には「本気で」思ったものです。もちろん国連がニューヨークに居続けることには、それ以上の政治的、象徴的な意味があるのでしょうけど....

記事では、モントリオールに移転するメリットとして以下のような説明をしています:

1.超大国から距離を置ける
2.コストが削減できる
3.マンハッタンのど真ん中よりも反テロ対策が簡単
4.敷地が広い(NYの9倍の敷地が確保できる)
5.モントリオールは英語・仏語のバイリンガル都市
6.モントリオールには既にいくつかの国際機関が拠点を置いている
7.街が安全で生活の質が高い


キャピタルマスタープランがまだ実行に移されていない現段階では、モントリオールは移転案をあきらめておらず、カナダ側の担当者のコメントによると、実現可能性は2〜5%だとか。国連側へ正式な提案は行われていないようですが、こういう壮大な計画、僕は好きです。

リンク:
The Gazette - The United Nations in Montreal? Don't laugh
La Presse - L'ONU dans la mire de Montréal
プロジェクトの全容(写真)



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プロフィール

mickey10044

Author:mickey10044
男性
国連職員。ITプロジェクトマネージャー(PMP)。
2006年4月からドイツ・ボン在住。4人家族でドイツでの生活を楽しんでいます。

mickey10044#hotmail.com
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